事務局 忠夫
最近のサークル「囲炉裏」のスタッフブログでは、これまで、0〜2歳期のA女の表情や身振り手振りを観察することをとおして、言葉によらない表現について考えてきました。
現在、A女は3歳の誕生日が近づき、自分の思っていることを言葉にしてしゃべることが、かなりできるようになっています。保育園でも、よくしゃべっているようです。
人間は五官(目・耳・鼻・舌・皮膚)を使って、周囲からいろいろな情報を深層意識として取り込み、そのうちの一部は表層意識に浮かび上がって言葉(心の中の言葉)になります。A女も、この段階までは、ずいぶんできていたように思います。
しかし、日本語の発音の仕方を知らないために、心の中の言葉を口に出してしゃべるのにずいぶん苦労してきたようです。3歳が近づいてきて、日本語の発音の仕方を少しずつ身につけ、心の中の言葉をかなり口に出してしゃべれるようになってきました。
いっしょに街を歩いているとき、消防車・救急車・パトカー・ゴミ収集車などが、そばを通り過ぎていくと、A女は興味を示して目で追いかけます。そして「消防車だ!」などと叫ぶこともあります。私は「ああいう車に乗ってみたいのだろう」と思っていました。
ところが、最近になって「大きくなったら消防のポンプ車になる」と言い出しました。私たち大人は「消防士になる」と考えることはあっても、「消防のポンプ車になる」と考えることはありません。消防士になる訓練を受けて、難燃性の衣装を買いそろえれば「消防士になる」ことができるかも知れません。でも、私たちが「消防のポンプ車になる」ことは、姿形から考えても無理です。
江戸川乱歩の小説「怪人二十面相」では、「怪人二十面相」があるときは老紳士にあるときは艶麗な貴婦人に姿を変えます。さらに、江戸川乱歩は二足歩行ロボットの姿をした「怪人二十面相」を考えることもできたでしょう。「怪人二十面相」は変装して老紳士・貴婦人・二足歩行ロボットになるので、老紳士・貴婦人・二足歩行ロボットの内側には本当の「怪人二十面相」がいるのです。
しかし、江戸川乱歩は「怪人二十面相」が消防のポンプ車に姿を変えることは考えられなかったと思います。私たちは、姿形が似たものに変装することはできますが、姿形がまったく異なるモノ(ポンプ車など)に変装することはできません。
A女が「ポンプ車になる」と言うときには、変装以外の方法で「ポンプ車になる」と考えているにちがいありません。では、A女はどのような方法で「ポンプ車になろう」と思っているのでしょう。
A女の表情や身振り手振りを観察してもA女のおしゃべりを聴いても、A女がどのような方法を考えているのか見当がつきませんでした。
以下は、私の心に浮かんだストーリーです:
私たちが見ているA女は人間の姿をしているけれど、これは「本当のA女」の仮の姿です。「本当のA女」は姿形をもたないが、この世に現れるときには、いろんな形(仮の姿)をして出てきます。数ヶ月(あるいは、数年)後に、「本当のA女」は人間の姿をしたA女から消防のポンプ車の姿をしたA女に変身します。人間の姿をしたA女も消防のポンプ車の姿をしたA女も「本当のA女」の仮の姿なのです。消防のポンプ車の内側にいるのは人間の形をしたA女ではなくて、姿形をもたない「本当のA女」なので、人間と姿形がまったく異なるモノ(ポンプ車など)になることもできるというわけです。
これからは、A女の言語表現をもとに、A女の顔の表情や身振り手振りの意味を考え直す必要が出てくるでしょう。