事務局 忠夫
サークル「囲炉裏」は、このところ、グループワーク活動を行っていません。できるだけ早い時期に再開したいと思っています。
先々月のスタッフブログに引き続き、間もなく生後1年4ヶ月になるA女のことについて書いてみたいと思います。
A女はヨチヨチ歩きを始めています。移動するためには、ハイハイの方がズッとはやいのですが、A女の新たな挑戦なのでしょう。
A女の挑戦に対して拍手して褒めると、A女は得意そうな顔をして、自分でも拍手をします。ときには、拍手をしてもらった人に向かってお辞儀をすることもあります。
「何分間、立っていることができるか」「つかまらずに、どれだけ歩けるか」を自ら試し、私たちに自分の成長ぶりを伝えます。また、A女は、顔の表情・拍手・お辞儀で、自分の気持ちを私たちへ伝えようとしています。自分の気持ちを伝える技術は相当なレベルになっているようです。
A女が大きな喜びを感じていることが、ひとり立ちやヨチヨチ歩き以外にもあります。それは、天井についている電灯を点けたり消したりすることです。
一日に何遍でも、母親に抱っこしてもらって壁のON/OFFスイッチを押し、電灯を点けたり消したりします。そして、嬉しそうな顔をして、手脚をばたつかせ拍手をします。その表情やしぐさから、A女の喜びは、ひとり立ちやヨチヨチ歩きの場合と同じぐらい、あるいは、それ以上であることが分かります。
なぜ、電灯を点けたり消したりすることがA女にそのように大きな喜びを与えるのでしょうか。「何で、そんなことが面白いの?」というのが、母親はじめみんなの疑問です。これに対する答えのひとつとして以下のストーリーを考えてみました。
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A女は、ひとり立ち・ヨチヨチ歩きができるようになって、ハイハイのときには届かなかった高いところにあるモノに触ったりなめたりすることができるようになりました。立って手が届くところにあるモノは、A女の自由になるのです。ところが、天井からぶら下がっている電灯には、立っても手が届きません。A女は「天井にある電灯は自分の自由にならない」と思い諦めていました。
ところが、偶然にも、壁のON/OFFスイッチを押せば、天井にある電灯を点けたり消したりできることを知ったのです。壁のON/OFFスイッチは、母親に抱っこしてもらえば手の届く高さにあります。
ひとり立ち・ヨチヨチ歩きしても手が届かないところにある電灯を「自由に」点けたり消したりできる。壁のON/OFFスイッチは、魔法使いが魔法をかけるときに使う杖のような存在です。A女は、魔法の杖(ON/OFFスイッチ)を使って、電灯に魔法をかけているのです。
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A女はつまらない理屈をいっさい考えずにON/OFFスイッチを押し、電灯が点いたり消えたりするのを見て「魔法がかかった!!」と全身で喜びを表現しています。
一方、私は電灯とON/OFFスイッチが壁の中のコードでつながれていることを知っています。この知識をもとに考える限り、A女の気持ち(大きな喜び)を理解することはできないでしょう。私は、コードの存在をいったん忘れることで、はじめてA女の気持ちをその身になって理解できたと思います。
自分の知識・考えをいったん脇に置いて、相手の気持ちをその身になって理解することを、カウンセリングでは「共感的理解」と言います。今回、A女から「共感的理解」の基本を教えてもらった気分です。